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神話とは何か?
神話とは何か?について辞書による説明を紹介します。
「宇宙・人間・動植物・文化などの起源・創造などを始めとする自然・社会現象を超自然的存在(神)や英雄などと関連させて説く説話」
つまり、神話とは、世界中の人類・生き物・文明・文化・社会などが、「なぜ」「どのように」生まれて今に至るのかを伝えている、フィクション的(空想的)な物語です。
神話によっては、完全な空想上の物語ではなく、事実であったり、事実が一部含まれているストーリーになっていることもあるため、「フィクション的な」と表現しています。
神話は、物語の内容によっては、「伝説」「昔話」「伝承(言い伝え)」「民話」などと呼ばれたりすることもあります。
歴史の起源は神話にある
世の中の歴史の始まりをたどっていくと、最終的には、「神話」に行き着きます。
神話は、様々な国・地域・社会・文化・宗教・民族・集団などの歴史について詳しく調べていくと、必ず存在します。
例えば、日本では、代表的で有名な神話に「古事記(こじき、ふることふみ、ふることぶみ)」の「国産み神話」などがあります。
(「古事記」は、「現存する日本最古の歴史書」と言われており、神話的な内容と、客観的な事実が書かれた歴史的な内容、に大きく分けて考えることができます。そのため、伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)による「国産み神話」、天照大神(天照大御神、アマテラスオオミカミ)の「天岩戸(あめのいわと、あまのいわと)隠れ」、素盞鳴尊(須佐男命、スサノオノミコト)による「八岐大蛇(ヤマタノオロチ)退治」、などの「古事記」の神話的な物語のことをまとめて、「古事記」と表現していることがあります。)
他にも世界に存在する神話の種類には次のようなものがあります。
- ギリシャ神話
- 北欧神話
- エジプト神話
- ケルト神話
- マヤ神話
- アステカ神話
そして、世界中の多くの民族が、自分達や、宇宙・自然・世界・人類・生物・文明・文化・社会などが、なぜ生まれたのか、いつ生まれたのか、どこでうまれたのか、どのように生まれたのか、誰・何の力によって生まれたのか、について語られている神話を持っています。
そして、世界中の神話には共通する特徴があります。
神話の6つの特徴
神話の特徴は非常多くあります。ここでは、神話の特徴を6個紹介します。
- 宇宙・世界中の様々な物事についての起源
- 「神」などの絶対的・神秘的・空想的な存在
- 独特の宇宙観・世界観・思想が存在する
- 「生き方の道しるべ」となる話が含まれている
- 無限の解釈が可能な比喩的表現・モチーフ
- 人の深層心理に深く刻み込まれるストーリー
宇宙・世界中の様々な物事についての起源
神話では、宇宙・世界・自然・人類・生物・国・地域・文明・文化・民族・社会・集団などについて、生まれた理由・目的・背景・プロセス・起源が物語として語られています。
例えば、古事記の「国産み神話」、旧約聖書の「創世記」、といった創世神話・創造神話などがあります。
そして、自分の生まれや育ちに関わりのある民族・地域・国・文明・文化・社会・信仰などの神話を見聞きすることによって、自分の生きている宇宙・世界がどのような存在で、自分がいったい何者で、なぜ生まれ、どのように生きていくのが良いのか、生きるべきなのか、生きていくことができるのか、などについての価値観や指針を知って身に付けることができるのです。
「神」などの絶対的・神秘的・空想的な存在
神話の物語には、神・精霊・天使・悪魔・妖精などの、絶対的・神秘的・空想的な存在が登場します。
そして、神話の物語では、神などが重要な役割を持って活躍します。
神などが登場することで、神話の内容は、客観的(科学的)に事実であるかは別として、本当である、本物である、真実である、と信じ込んでしまいたくなる、「主観的真実」「精神的真実」とでも言うべき不思議な魅力・説得力を持っています。
独特の宇宙観・世界観・思想
神話には、独特の宇宙観・世界観・思想が存在します。
例えば、古事記では、日本を創造した伊邪那岐命と伊邪那美命、神々が住む国である高天原(たかまがはら)、死者が行く着き暮らす黄泉(よみ)の国、などが存在しているという世界観(設定)を持っています。
また、旧約聖書では、宇宙・世界・生物などを造った創造神、天国、地獄、天使、悪魔、などが存在しているという世界観(設定)になっています。
世界中の神話には、根本的な宇宙観・世界観・思想が共通している内容も多いです。しかし、神話の物語の中で、具体的な宇宙観・世界観・思想の描かれ方は、それぞれの神話で独特・個性的な内容になっています。
「生き方の道しるべ」となる話
神話には、「生き方の道しるべ」となる話が含まれています。神話の中での「生き方の道しるべ」とは、次のような内容です。
- 善悪
- 道徳
- 倫理
- 規範
- 掟(おきて)
- 戒律
- 教訓
- ルール
- 見本・手本
- 生き方
- 理想
神話に含まれる「生き方の道しるべ」は、はっきりと分かるようになっていることもあれば、さりげなく自然と語られていることもあります。どちらにしても、神話の物語に含まれる「生き方の道しるべ」は、その神話を語り継ぐ民族・地域・国・社会・集団・文化・信仰などに関わる人々が影響を強く受けます。
そして、神話の物語での「生き方の道しるべ」を見聞きした人は、「生き方の道しるべ」となる教えを踏まえて、生きて行くために最も重要視する根本的な価値観・信念・考え方を作り出します。
その結果、人々がみんな、同じ神話の物語を見聞きすることで、物語の中での「生き方の道しるべ」を共有し、自分達が関わる民族・地域・国・社会・集団・文化・信仰などに共通する価値観・信念・考え方を身に付けるようになるのです。
無限の解釈が可能な比喩的表現・モチーフ
神話は、神話の物語について、見る人、聞く人、見聞きすする時の状況、などによって無限に様々な解釈・評価・印象・考え方・感じ方ができる、比喩(ひゆ)的な表現・モチーフがあります。
なぜなら、神話には空想的・抽象的な表現やモチーフが数多く登場するからです。
神話を含め、様々な物語で、空想的・抽象的な表現やモチーフが存在すると、物語を見聞きする人は、想像力がかき立てられ、自分自身の心理を物語に投影しやすくなります。そして、神話の物語が、自分の心理・生活・人生などを例え話として比喩的に表しているように感じたり、自分の生活・人生で現実に起こった自分自身の実体験であるように感じやすくなるのです。
例えば、おとぎ話などの物語を見聞きした小さな子供が、物語の内容を現実で起こっている客観的な事実であると信じていたり、物語の主人公や脇役などの登場人物になりきることが、わかりやすい例です。神話を見聞きしたのが、子供であるか大人であるかは、関係ありません。子供でも大人でも、男でも女でも、どこで生まれ、どこに住んでいようと、神話を見聞きした人は誰にでも、おとぎ話を聞いた小さな子供と同じようなことが、人や状況によってどの程度影響を受けるかに差はありますが、意識的・無意識的に心の中で起こるのです。
さらに、神話の物語で、登場する人物・生物・存在、起きた出来事、などを自分自身や自分自身の生活・人生と一体化します。そして神話の物語で登場人物などが、感じ、考え、やったこと、を自分なりに解釈して、自分の生活・人生で同じようなことをやろうとします。あるいは、やってはいけないと思ったことは、やらないようにします。
その結果、神話の物語で起きた出来事と同じような出来事を、現実の世界で、「起こそう」あるいは「起こさないようにしよう」とします。そのようにして、神話などの物語の影響を受けた人々の考えと行動の力によって、歴史が動いていくことになるのです。
人の心に深く刻み込まれるストーリー
神話は、人の心に、印象・影響が深く刻み込まれるストーリーになっていることが多いです。
なぜなら、神話の特徴として紹介した、宇宙・世界中の森羅万象(しんらばんしょう)あらゆる万物についての起源が語られている、「神」などの神霊をはじめとした絶対的・神秘的・空想的な存在が登場する、独特の宇宙観・世界観・思想が存在する、生活や人生の道徳的・規範的・理想的な生き方を教え導く「生き方の道しるべ」となる話、人や状況によって無限の解釈が可能な比喩的表現・モチーフ、などは人間の心理に大きく強く深く影響を与え、しかも物語として語られているからです。
ストーリー形式になっている神話・伝説・伝承・物語などは、物語の内容を不思議と聞きたくなり信じたくなる、人の心を強く引き寄せる心理的・精神的な魅力があるのです。
神話が心に与える影響
神話は、人の心、つまり人間の心理に、非常に強力で重大な影響を与えます。
神話は人間のあらゆる心理に影響を与える可能性がありますが、特に重大な影響を与える心理について紹介します。
- 無意識
- 思想
- 宇宙観・世界観
- 価値観
- 解釈・視点・バイアス
- 思考
- 感情・気持ち
- 倫理観
- 信仰心・宗教観
- 歴史観
- 愛国心
- アイデンティティ
- 人生観
- 哲学
- 主義
- 考え
- 意見
- 判断基準
- 評価
- ライフスタイル
- 行動
- 習慣
- 死生観
- 信念
- 信条
- 心情
- 心構え・マインドセット
- 魂
- 使命感
- 義務感
- 性格
- 態度
- 注意・注目
- 興味・関心
- 美学・こだわり
- 在り方
- 理念
- イメージ・観念・心象・想像
- 印象
- 目的意識・目標意識
- 意思・意志
- 選択
- 意識
- 智慧
神話は人間心理に、広く、深く、強く、影響を与え、人間の行動を変えます。
そして積み重なった行動は、習慣となります。習慣は人間の、生活、人生、を形作ります。
そして、神話の影響を受けた人間の行動と習慣は、集団・社会・民族・地域・文化・経済・政治・宗教・学問・教育・芸術・文明・国・人類・自然・世界・宇宙などに影響を与え、歴史を造ります。
そのため、1人でも多くの人が、同じ神話から、同じような影響を受けたとすれば、現実世界へ与える影響は大きく巨大になっていきます。
神話の真実味は徐々に薄まっている
13歳までに自分の国の神話を学ばなかった国・民族は滅びる
と言われています。
ここで言う「自分の国」とは、単に法律で決められらた「国」(国家)だけのことではありません。自分が生まれた地域・民族・社会なども含まれています。つまり、自分の真の故郷・ルーツ・起源のことです。
「日本」という国、「日本人」という民族であれば、自分達の神話は「古事記」になります。
もちろん、日本に生まれ、日本で育ち、日本人の血を引いていたとしても、「古事記」以外の神話もあると思います。(都市伝説的ですが、「竹内文書」や「ホツマツタヱ」なども日本の神話と考えることができるかもしれません。)
また、「古事記」ではなく、日本以外や日本人以外の国・地域・民族に、自分の生まれとなる故郷があれば、その国・地域・民族の神話も、自分にとっての起源・ルーツとなる神話です。
神話を創ったのが誰かは不明
世界中にたくさんの数が存在する神話ですが、多くの神話は誰が創ったのかははっきりと分かっていないことが多いです。
(神話の物語を、編集してまとめた人、については分かっていることもよくあります。また、日本の「古事記」などのように、どの書物に神話が書かれていたかは分かることがあります。)
神話を創った人が誰であるかが、神話の物語の中で語られていることもありますが、神様や仙人のような存在・人物であることも多いです。
そのため、本当に実在していたのか空想上の存在・人物なのかはっきりとは分からないことも多いです。
いずれにしても、古くからある大昔の神話は、人から人へと代々語り継がれてきました。
神話が創られた4つの目的
なぜ神話が創られたのか?については、謎で、はっきりとは分かりません。神話が創られた時期や場所も、神話によって分かっていたり分かっていなかったりと様々です。しかし、神話が何の意味も無く創られ、語り継がれてきたとは考えにくいです。
そのため、神話は、何らかの深い本能的・意図的な目的があり、伝承されてきたと考えるのが適切で自然だと思います。神話の多くに、人類・生き物・国・地域・社会・文化・宗教・民族・集団などが、誕生した理由・目的・背景・起源となる物語が語られているため、次のような目的があるのではないかと考えています。
- 価値観や世界観の共有
- 自分達が由緒正しい血筋や歴史を持っているという正当性・正統性の主張
- 自分たちは偉大で素晴らしく立派で誇らしい人々であることを証明し子孫に伝える
- 事実や真実を伝える
価値観や世界観の共有
神話が創られ語り継がれるのは、価値観や世界観の共有のためです。
神話は、物語の魅力のために、ある程度は自然と語り継がれてきたと思います。また、自分達の民族・地域・社会・集団・国・風土・環境・文化・風習・伝統・信仰・宗教・芸術・技術・文明などに適した価値観や世界観は、広まりやすく、語り継がれやすく、共有されやすいです。
さらに、天皇などの国や地方の代表者、時の権力者、日本に住む日本人などが、自分達の価値観や世界観を共有するために語り継がれてきた可能性があります。なぜなら、国・社会・民族を、維持・存続・発展・繁栄させるためには、ある一定以上の価値観・世界観の共有が必要になるからです。
例えば、日本では、「和の精神」「大和魂」「武士道」といった日本や日本人に独特の価値観・世界観、日本・日本人ならではの「和の心」と強く関連・影響し合っている東洋思想・古神道・神道などの価値観・世界観、が「古事記」の神話などを見聞きすることによって、自然と共有されるようになります。
自分達が由緒正しい血筋や歴史を持っているという正当性・正統性の主張
神話は、自分達が由緒正しい血筋や歴史を持っているという正当性・正統性を主張するために、創られ、語り継がれてきました。特に、権力者が人々を政治的・武力的に、支配・コントロールをするために、支配・コントロールしやすくする目的のために、神話を利用してきた歴史があります。
例えば、日本では、「古事記」に登場する神々や人々の子孫であると主張して、天皇(の権力を利用したい人々)、貴族、豪族、武士、戦国武将、将軍、大名、商人、芸術家、宗教団体、僧侶、などが自分達の血筋には正当性・正統性があり、権力・尊敬を集めるにふさわしい、偉大で立派な素晴らしい人(の集まり)であることを証明しようとしました。
自分たちは、偉大で、素晴らしく、立派で、誇らしい人々であることを証明し子孫に伝える
神話の役割として、自分たちは、偉大で、素晴らしく、立派で、誇らしい人々であることを証明し子孫に伝えることがあげられます。
神話を見聞きすることで、自分自身、自分の先祖、自分の家族、自分達の民族・集団・社会、自分の生まれた地域・国、自分達の伝統・文化・風習・信仰・宗教・芸術・技術・文明、などについて愛着心・自信・誇り・忠誠心といった心を持ちやすくなります。
なぜなら、神話の物語のあちこちに、自分自身に関わりのある宇宙・世界・自然・人類・生物・国・地域・文明・文化・信仰・宗教・伝統・風習・芸術・技術・民族・社会・集団などについて、誰でも分かるようにはっきりと、あるいは無意識に心に深く影響を与えるよう暗示的に、語られているからです。
事実や真実を伝える
神話には、事実や真実を伝える役割があると考えることができます。
神話は、ただのおとぎ話ではなく(おとぎ話やフィクションのように感じる内容も多いですが)、歴史的な事実や、神話を創った人(人々)から見た視点・解釈での真実、を後世の子孫に伝えています。
心に残り、何世代、何十世代、何百世代以上もの永い時代を越えて、多くの人に、語り継がれる神話は、様々な分野に非常に大きな影響を与えます。
日本の「古事記」などの神話は、その神話を、読み、聞き、触れて、知り、親しみ、理解し、想像し、覚え、気持ち・心がゆれ動き、感情が刺激され、感動した、人に非常に大きな影響を与えます。
なぜなら、神話は、人の心と行動に非常に深く強く影響を与えるからです。
そして、神話を見聞きした子孫は、先祖の人々が語る神話を事実・真実であると信じます。その結果、自分のお父さん・お母さん、自分のおじいちゃん・おばあちゃん、ひいおじいさん・ひいおばあさん、そしてそのまた父母・祖父母・曽祖父母…と、先祖の人々が持っていた価値観・考え・歴史観・習慣・伝統・文化・信仰・技術・文明などを引き継ぐことになるのです。
神話の神々の子孫が歴史を動かす
神話は、目立つところでも、目立たないとことでも、人類の歴史に影響を与え続けて来ました。
日本では、古事記で登場した神々の子孫とされる一族が、日本の歴史(日本史)を大きく動かしてきました。
例えば、日本史で登場する歴史上の人物の先祖をたどっていくと、古事記に登場する神々の子孫であることも多いです。
具体的には、次のような家柄や氏族があります。
- 天皇
- 天皇家
- 物部(もののべ)氏
- 藤原氏
- 源氏
- 平氏
- 足利氏
- 徳川氏
- 出雲(いずも)氏
- 阿倍氏
- 蘇我(そが)氏
- 息長氏
- 葛城(かつらぎ)氏
- 新田(にった)氏
- 松平氏
- 近衛(このえ)家
- 一条家
- 紀(き)氏
- 橘(たちばな)氏
- 大伴(おおとも)氏
- 中臣(なかとみ)氏
- 佐伯(さえき)氏
他にも様々な氏族が古事記に登場する神々の子孫であるとされています。さらに神々の子孫である氏族の、さらにその子孫達は、名前(苗字)が変わっていることも多いです。そして様々な名前を名乗って、現在も生き残り、日本・世界・人類の歴史に、表から裏から、影響を与え動かしてきています。
そして、現在だけではなく、これからの未来でも、歴史に影響を与え続けていくこときなると思います。
歴史は神話から始まり現在に至る
歴史の根元的な始まりは、「神話」にあります。そして神話から始まった歴史が、先祖から子孫へ脈々と受け継がれ、現在に至っているのです。
つまり、歴史の全てではないものの、神話があるからこそ、現在の歴史があるのです。
そして、神話があるからこそ、神話の影響を何らかの形で、意識的にも無意識的にも受けて、現在の自分があり、現在の生活・人生があり、現在の価値観・世界観・宇宙観・考え方・思考・思想・感情・精神・心理・行動・習慣などがあり、現在の民族・国・地域・社会・集団・伝統・文化・風習・信仰・宗教・芸術・技術・文明などがあるのです。