マーケティングの分野で「3C分析(さんしーぶんせき)」と呼ばれる理論・考え方があります。
3C分析は、ビジネスの戦略を立てて、ビジネスを成功させるために、一般的に広く知られているマーケティングのフレームワーク(考え方の枠組み)です。
そのため、3C分析は、マーケター・経営者・コンサルタント・リサーチャー・アナリスト・企画職・営業職などの職業、ビジネス・経営・マーケティング・コンサルティング・企画開発・研究・調査・販売促進・広告宣伝などの分野、で主に使われていますが、他にも様々な職業や分野で応用することもできます。
目次
「3C」が表す3つの要素
3C分析の「3C」とは、ビジネスを成功させるために考えた方が良い3つの要素を表しています。
- Customer(Consumer):顧客
- Competitor:競合者
- Company(Corporation):自社
Customer(Consumer):顧客
3Cの1つ目は、「Customer(カスタマー)」あるいは「Consumer(コンシューマー)」です。
Customerとは「顧客」、Consumerとは「消費者」のことです。
CustomerやConsumerは、細かな視点では一人一人のお客さんや見込み客、大きな視点ではお客さん・見込み客の集まりである顧客層や市場全体、を表します。
つまり、商品やサービスを提供する相手、行動して欲しい相手、について分析するということです。
その為、CustomerやConsumerに関する分析は、「顧客分析」、「市場分析」、とも呼ぶことができます。
ビジネスにおいて、成功の鍵を握っているのは、「お客さん」です。
もちろん、時代の流れや流行、ライバルの存在、自分の持っている能力やスキル、お客さんに提供する商品やサービス、などのお客さん以外の要素もビジネスの成功に大きな影響を与えるため重要です。
しかし、ビジネスが成功するかどうかを根本的に決めているのは、お客さん、です。
商品・サービスを提供する相手、行動して欲しい相手、が買う・申し込む・予約する・来店する・参加するなどの行動をすることで、ビジネスが成功する根本的な基礎となるのです。
そして、顧客分析や市場分析をすることによって、お客さんや見込み客などの相手のことを知って理解が深まります。
すると、相手が行動するかどうか、どのような相手が行動しやすいか、どうすれば相手が行動しやすくなるか、がよりはっきりと分かるようになってきます。
その結果、相手が行動する確率が高いマーケティングができるようになります。
CustomerやConsumerに関する分析では、顧客や見込み客など相手の、デモグラフィック(人口統計的)データ、サイコグラフィック(心理的)データ、を集めて分析します。
デモグラフィックデータとは、年齢(層)、性別、住んでいる地域・場所、職業、収入、家族構成、などの人口統計的な情報のことです。
サイコグラフィックデータとは、興味、関心、性格、価値観、好み、などの心理的な情報のことです。
つまり、CustomerやConsumerに関する、顧客分析・市場分析とは、顧客や見込み客となる相手の人や人々が、一体どんな人(人々)なのか?を明らかにして、相手のことを知り、理解する、ということです。
Competitor:競合者
3Cの2つ目は、「Competitor(コンペティター)」です。
Competitorとは、「競合者」という意味です。ビジネスでは「競合他社」や「ライバル企業」を意味しています。
ビジネス以外の場面では、「ライバル」「競合相手」のことです。
そのため、Competitorに関する分析とは、「競合分析」のことを表しています。
Competitorに関する競合分析では、そもそも競合者は一体誰なのか?を決めたり、競合者の持っている能力・技術・情報・知識・経験・智慧・人材・施設・資金・資産・歴史・価値観・イメージ・商品・サービス・顧客などの情報を集めて分析します。
Competitorが具体的にどのような競合者を表すかは、自 分や自分達の(会社・団体・チームなどの)状況によって様々です。競合者とは、自分や自分達の顧客・見込み客となる人が、自分や自分達の提供する商品・サービスの替わりとなる、別の商品・サービスを提供している個人・企業・団体などのことです。
つまり、「自分の代わりになる存在」が競合者です。
ビジネスで成功するためには、お客さんや見込み客となる人との関わりだけではなく、競合者との関わり方も、非常に重要です。
なぜなら、自分(達)の代わりになるような競合者がいればいるほど、お客さんや見込み客となる相手の人が、自分(達)の提供する商品・サービスを買うなど、自分(達)が望んでいる行動をする確率・可能性が下がるからです。
そのため、競合者とは異なる存在になったり、競合者よりも優位な立場になって、差別化することが重要です。
自分(達)と競合者との差別化が成功すれば、お客さんや見込み客となる人が、自分(達)の提供する商品・サービスを買うなど、自分(達)が望んでいた行動をする確率・可能性が高まります。
Competitorに関する競合分析によって、競合者がどのような存在でどのような活動を行っているかを知ることによって、自分(達)がどのように行動すれば成功しやすくなるかを明確にすることができます。
Company(Corporation):自社
3Cの3つ目は、「Company(カンパニー)」あるいは「Corporation(コーポレーション)」です。
「Company」も、「Corporation」も、「会社」という意味です。
そのため、3C分析でのCompanyやCorporationとは「自社」と訳されることが多いです。
しかし、もっと言えば、「Company」は「仲間」・「友人」・「集まり」・「集団」、「Corporation」は「法人」・「地方・都市の、自治体・公共団体」、なども表しています。
そのため、自分や自分達の会社・団体・組織・チームなども含んでいます。
つまり、Company(Corporation)とは、自分自身、自分達自身、のことです。CompanyやCorporationに関する分析では、自分や自分達(の会社・団体・組織・チームなど)について、「自社分析」あるいは「自己分析」をします。
Company(Corporation)に関する自社分析では、自分(達)の持っている能力・技術・情報・知識・経験・智慧・人材・施設・資金・資産・歴史・価値観・イメージ・商品・サービス・顧客などの情報を集めて分析します。
3C分析のメリットとデメリット
3C分析はビジネスの中でも一般的によく使われていると言われることが多いです。
3C分析を使うかどうかを決めるために、あるいは3C分析をする時に知っておいた方が良い、メリットとデメリットについて話していきます。
3C分析のメリット
- ビジネスを成功させるための要素(KSF:Key Success Factor)を発見できる可能性がある
3C分析のメリットとして、ビジネスを成功させるための要素が何かを発見できる可能性があります。
ビジネス・経営・マーケティングの分野などで、成功のための要素のことを、専門用語で「KSF(Key Success Factor)」(キー・サクセス・ファクター)と呼ぶことがあります。
KSFは日本語で「主要成功要因」と訳されることが多いです。
そのため、3C分析はKSF(主要成功要因)を見つけるためにすることが多いです。
3C分析はビジネスが成功する要素を発見するだけではなく、3Cに関する調査結果や分析結果を、商品やサービスの開発・改善に活かしたり、経営の方針や戦略の決定に活かしたり、ビジネスで様々な活用ができる可能性があります。
3C分析のデメリット
- 具体的にどのように情報収集して分析すれば良いかは、他の分析方法を参考にする必要がある
- 分析後にどのような行動をすれば良いかは、分析結果をもとに考えて決める必要がある
- 分析の成功・失敗が分かりにくい
具体的にどのように情報収集して分析すれば良いかは、他の分析方法を参考にする必要がある
3C分析は、顧客を表すCustomer・Consumer、競合者を表すCompetitor、自社を表すCompany・Corporation、に関することがビジネスにとって重要であるため、3Cについて情報集して分析することがビジネスの成功につながる、ということを知ることができます。
しかし、3C分析は、「分析」という呼ばれ方をしていますが、実際には分析というよりは考え方・理論です。
そのため、顧客・競合・自社について、具体的にどのように情報収集して分析すれば良いかまでは分かりません。
具体的な、情報収集の方法、分析方法、については他の分析方法を参考にする必要があります。
3C分析ができるようにするための他の分析方法としては、マーケティングリサーチ(市場調査)全般、4P分析、顧客分析の一種である4C分析、マクロ分析、ミクロ分析、経済学・経営学・社会学・心理学・文化人類学・科学など様々な分野で使われる調査方法・分析方法、などを参考にするのが良いと思います。
分析後にどのような行動をすれば良いかは、分析結果をもとに考えて決める必要がある
3Cに関する調査・分析を行った結果、顧客・競合・自社に関する様々な情報が手に入ると思います。
しかし、3Cに関する調査・分析後に手に入れた情報をもとに、次にどのような具体的な行動をすれば良いかは、おそらく最も知りたいことだと思いますが、3C分析では分かりません。
そのため、3C分析の結果を参考にしながら、ビジネスがさらに成功するにはどのような行動をするのが良いか、改めて考えて決める必要があります。
3C分析後に実行する具体的な行動や取り組みを決めるために、SWOT分析などを行うことで、次に自分(達)がやるべき行動がわかってくる、と言われていることが多いです。
実際には、SWOT分析をやらなくても、3C分析をやった後や早ければやっている途中で、次に自分(達)がどのような行動や取り組みをすれば良いか、アイデアを思い付くことも多いです。
むしろSWOT分析が正しくできず、正しくない行動や取り組みをやってしまうことも多いです。
SWOT分析を実際にやるかどうかは別として、3C分析を行った後で、ビジネスを成功させるために、自分(達)がどのような行動をすれば良いか考えて決まり、具体的な行動や取り組みをすることで、初めて3C分析をやる意味や価値が有ります。
分析の成功・失敗が分かりにくい
3C分析をはじめ、様々なマーケティングフレームワークに言えることですが、調査・分析をしただけでは、分析が成功したのか失敗したのかは、非常に分かりにくいです。
なぜなら調査や分析の成功・分からず失敗は、どのような目的があって調査・分析をしたのか、調査・分析の内容をもとに行動したことで望んでいた結果が得られたのかどうか、で決まるからです。
そのため、3C分析をする目的が明確に分かっていて、3C分析の結果を参考にした行動や取り組みによって欲しかった結果が得られれば、成功したと言えるでしょう。
しかし、実際によくあることなのですが、何のために3C分析をするのか分からず目的が無いまま分析したり、3C分析の結果を参考にせず行動したり取り組んだりしていると、成功か失敗か分からないままになってしまいます。
3C分析をする時の注意点
3C分析をやる時には注意点があります。
3C分析の注意点に気をつけて調査・分析を行うことで、意味・価値のある分析、効率的な分析、がやりやすくなります。
分析の目的を明確にする
3C分析のデメリットととしても話していますが、3C分析に限らず、何かの分析をする時には、分析の目的を明確にすることが非常に重要です。
特に3C分析の場合は、顧客・競合者・自社というかなり幅広い分野・項目について調査・分析をすることになります。
そのため、もし分析の目的を明確にしていなければ、調査・分析の対象範囲となる物事があまりにも多くなり過ぎ、ビジネスの成功に必要な他の行動や取り組みにかけられる労力・時間・お金などのエネルギーが少なくなり、ビジネスの成功に悪影響を与える可能性があります。
逆に、分析の目的を明確にすることができれば、何について、どこまで、どのように、3C分析で調査・分析すれば良いかが明確になり、効率的な調査・分析を行いやすいです。
分析を終了する基準をあらかじめ決めておく
分析の目的を明確にすることとも関連していますが、3C分析を行うときには、分析を終了する基準をあらかじめ決めておくことが重要です。
3C分析を含む他の分析方法にも言えることですが、分析を終了する基準をあらかじめ決めておかなければ、永遠にいつまででも調査・分析をすることができてしまうからです。
分析を終了する基準を決めていない場合、3C分析で得たい調査・分析結果が得られた後も、必要以上に余計な調査・分析をしてしまうことが多いです。
すると、調査にかける労力・時間・お金などのエネルギーが無駄になってしまいやすいです。
3C分析を終了する基準を何にするのが良いかは、分析の目的や自社の状況などによって様々ですが、例として次の4項目を紹介します。
- 調査・分析で得たい情報・結果の内容で決める
顧客が今欲しい商品・サービスについての情報が得られたら終了する、競合者が共通して持っている強みが分析して分かったら終了する、自社が過去に販売した人気商品について調べたら終了する、など。 - 調査・分析する情報量で決める
顧客100人にアンケートを取ったら終了する、競合他社3社分のデータが得られたら終了する、自社の過去1年間の売上合計金額が分かったら終了する、など。 - 分析する期間を決める
1日・1週間・1ヶ月・1年間分析したら終了する、分析のために1日1時間使ったらその日の分析を終了する、次の会議までの間は分析して会議で分析結果の発表が終わったら終了する、など。 - 分析に使用する費用で決める
(年間100万円の予算を使ったら終了する、10万円の費用を使い切ったら終了する、1日1000円以上の費用を使ったらその日の調査・分析は終了する、無料でできる範囲で調査・分析してお金が少しでも1円でもかかりそうになった時点で終了する、など)
3C分析を終了する基準をはっきりと決めておくことで、意味・価値のある効率的な分析ができるようになります。
分析結果を常に最新の状態に更新しておく
3C分析だけではなく様々な調査や分析でも同じですが、分析結果を常に最新の状態に更新しておくことは非常に重要です。
調査や分析した結果が古い状態だと現在の状況が以前から変化していれば、現状とは違う分析結果をもとに行動してしまうことになります。
そして、結果的に、正しくない行動、適切ではない行動、をしてしまいやすくなってしまいます。
特に現代は、変化の流れが早く、変化の大きさも激しい、激変の時代です。
そのため、分析結果を常に最新状態にしておくことで、現在の状況を適切に対応した行動や取り組みができるようになります。
3C分析のオススメの利用方法
3C分析は、適切に利用すればビジネスの成功に役立つ情報や分析結果を得られます。
適切ではない利用方法だと使いづらかったり全く役に立たなかったりします。
3C分析の評価が世の中で大きく違うのは、おそらく適切な利用方法を知っているかどうかだと思います。
そこで最後に、3C分析をビジネスの成功のために実際に利用する時の、オススメの方法を3つ紹介します。
利用目的が明確な時だけ使う
3C分析の注意点でも話していましたが、3C分析は利用目的が明確になっていることで、分析する意味・価値が高まります。
そのため、利用目的が明確になっている時だけ、3C分析を使うようにします。
逆に、利用目的が不明・あいまいで明確になっていない時は、調査・分析にかける労力・時間・お金などのエネルギーが無駄になりやすいため、3C分析をやる意味・価値がありません。
むしろ、3C分析以外の別のビジネス活動をやった方が、ビジネスの成功にはるかに役に立ちます。
1ヶ月以内に調査・分析を終える
3C分析は1ヶ月以内に調査・分析を終えるようにします。
1ヶ月というのはあくまで目安なので、実際は自分(達)のビジネスの状況や目的に合わせて、調査・分析に最適な期間を設定します。
ただし、できるだけ短期間で調査・分析を終えるようにした方が、3C分析をやる価値が高まりやすいです。
なぜなら、変化が早く激しい現代では、3ヶ月・6ヶ月・1年以上など、調査・分析する期間が長くなれば長くなるほど、顧客・競合者・自社の状況が大きく変わり過ぎてしまう可能性が大きくなります。
すると、せっかく労力・時間・お金などのエネルギーをかけて調査・分析した結果が現状と大きく違っているという問題が起きて、役に立たなくなる可能性が高くなります。
そのため、1日・1週間・1ヶ月など短期間に調査・分析を行うことで、3Cについての最新の情報を分析に活用することができるようになります。
そして、定期的にこまめに顧客・競合者・自社の情報を収集して分析することで、時代・環境・状況の変化に対応しやすくなります。
さらに、調査・分析期間が短い方が、少ない労力・時間・お金などのエネルギーで効率的です。
そして、短期間の調査・分析を定期的に頻繁に行うことで、日常的にリサーチをしているのと同じことになり、顧客・競合者・自社の新しい情報を常に入手できるようになります。
分析結果が得られたらすぐに活用する
3C分析で得られた分析結果はすぐに活用した方が良いです。
なぜなら、分析結果をビジネスの成功のためにすぐ活用することで、分析結果が役に立つのか立たないのかが、すぐに分かりやすくなるからです。
そして、3C分析の分析結果をすぐに活用することで、分析結果の情報が古くなってしまう前に、ビジネスに取り入れることができます。
その他の3C分析系マーケティングフレームワーク
3C分析は、1982年に大手コンサルティング会社マッキンゼーで経営コンサルタントを当時やっていた大前研一さんによって提唱され、世の中で有名になりました。
その後、時代の変化とともに、3C分析を基本にした、新たなマーケティングフレームワークが開発されるようになりました。
具体的には、その他の3C分析系マーケティングフレームワークとして、「4C分析」や「5C分析」などがあります。
もし興味があれば学んでみてください。